スマートフォン用のSoC(System-on-a-Chip)や各種通信機器向けの半導体事業などで知られるクアルコムテクノロジーズ社(以下、クアルコム)は、AI処理の高速化を目指すPythonライクな新言語「Mojo」の開発元であるModular社の買収を発表しました。
Modular創業者はLLVMやSwiftの開発者
Modular社は、コンパイラ基盤として広く使われているLLVMやApple製品の開発言語であるSwift言語、GoogleがAI処理のために設計したCloud TPUなどの開発に関わってきたChris Lattner氏が共同創業者兼CEOを務める企業です。
同社が2023年5月に発表したMojo言語は、AI処理を高速に実行するPythonライクなプログラミング言語です(発表当初は「Python言語のスーパーセット」と説明されていましたが、その後「Pythonライクな言語」へと説明が変更されました)。
MojoはCPU、GPU、NPUなどを高度に抽象化して効率的に利用する仕組みを備えており、AI処理で広く使われているPythonのコードからMojoへ移植することで、さまざまなデバイス上でPythonよりも非常に高速にAI処理を実現すると説明されています。
そのMojoは先月(2026年5月)にベータ版が公開されており、今年秋にはオープンソースとして公開される予定となっています。
参考:AIを高速にするPythonライクな新言語「Mojo」、ベータ版に到達
NVIDAの強さにModularで追随する戦略
Modular社の買収を発表したクアルコムは、Snapdragonを始めとするスマートフォン用やPC用のSoCで知られる企業ですが、同社は今月(2026年6月)にDragonflyと呼ばれるAIデータセンター向けのCPUを発表。AIデータセンター市場への本格参入を表明したばかりです。
今回のModular社の買収も、このAIデータセンター市場への本格参入に関わる戦略の一環と見られます。
つまり単にAIデータセンター向けのCPUを提供するだけでなく、そのCPUで高速に実行可能なAI処理のソフトウェア基盤を提供することをModular社買収により目論んでいるのです。
これはAI向けのプラットフォームベンダとしてトップを走るNVIDIAが、同社製品上に優れたソフトウェアプラットフォームであるCUDAを提供することによってその強さを維持し続けていることに追随しようとする戦略であると見られます。
マネタイズから解放されたMojo
Mojoは今年(2026年)の秋にはバージョン1.0に到達し、オープンソース化される予定です。そのMojoが今後どこまで存在感を高めることができるかが、クアルコムのAIデータセンター向け戦略の行方を大きく左右する要素になりそうです。
と同時にModular社は以前から、プログラミング言語のMojoをどのようにマネタイズするのかを模索していました。しかし今回、クアルコムという強力な後ろ盾を得ることによって、マネタイズに関する心配は過去のものとなるはずです。
今後Mojoは、例えるならばAppleのSwiftのように、あるいはJetBrainsのKotlinのように、オープンソースで開発されているプログラミング言語という位置づけで多くの開発者の興味を引きつつ、ベンダの製品戦略において重要な位置を占めるソフトウェアプラットフォームになると見られます。
それゆえにMojoは少なくともこの先数年は全力で普及を目指すべく、プログラミング言語としての機能強化はもちろんのこと、さまざまな施策を実施することになるのではないでしょうか。
